”犬は肉食動物なので肉中心のフードが適していて、穀物類は必要ない”
などと掲載してグレインフリーのフードが一番いいフードだと言うサイトが非常に多いように感じます。
まず、犬は肉食動物ではなく雑食動物です。
言い方を変えると「肉食に近い雑食動物」とも言っていいかと思います。
このあたりから解説してみようと思いますので少しお付き合い頂けたら幸いです。
肉食と雑食の違い
まず「肉食動物」と「雑食動物」の定義を確認してみましょう。
肉食動物
植物性の食品だけでは、いくつかの必要な栄養素を十分に摂取することができないため、動物性の食品を摂取する必要がある動物
雑食動物
動物性の食品を摂取しなくても生きていくことができる動物
※参考引用:ロイヤルカナン、ヘルスニュートリションラーニング・プログラム
人間は雑食動物ですね。
ちなみに猫は肉食動物です。
では、犬は・・・肉食とは言い切れず、
肉食に近い雑食動物と言う表現が一番実態に近いでしょう。

犬は雑食動物
犬は肉食目(ネコ目)裂脚亜目に属しています。


肉食目の中で犬はイヌ亜目に分類されます。
イヌ亜目の動物ではキツネやイタチなどの肉食動物からジャイアントパンダのような草食動物が含まれます。
犬やオオカミ、たぬきやクマなどは雑食動物としてイヌ亜目に含まれています。
犬の祖先と言われているオオカミは捕らえた動物だけではなく、果物やベリー類、そして草食動物の糞までも食べていたことが知られています。
つまり犬は祖先から雑食動物だと言うことが学術的に示されているのです。
ちなみにネコはネコ亜目に分類されネコ亜目の動物の殆どは完全な肉食になってます。
なのでネコは肉食動物です。
犬の食の歴史
犬が人間と暮らし始めたのはおよそ3万年前くらいからと言われてます。
危険な野生動物から集落などを守る目的で人間の側に犬が暮らし始めました。
それから狩猟のパートナーとしても活動を始めるなどし、更に人間が必要とした用途に改良が繰り返され現在のようないろいろな犬種が作られてきました。

犬の身体的特徴からの雑食性
雑食性の犬はその体の構造からもみられます。

臼歯
臼歯は雑食の象徴などと言われています。
犬の臼歯は26本なのに対し、ネコの臼歯は14本とおよそ2倍くらいの差があります。
ちなみに人間の臼歯は20本です。
腸の長さ
腸の長さ、いわゆる腸管長と体長の比率を比べた場合
犬は6:1
猫は4:1
すなわち犬の方がネコよりもおよそ1.5倍ほど腸が長いことがわかります。
小腸では食物の消化が行われ、膵臓から各種消化酵素が分泌されビタミンやミネラルが吸収されます。
食物の小腸内滞留時間は犬は3から5時間、ネコだと2から3時間程度と言われており、滞留時間からも犬の腸が長いことがわかります。
虫垂
虫垂は食物中のセルロースを分解するバクテリアの生息場所になっています。
草食動物の消化には欠かせない器官です。
ネコは虫垂が短くほとんど機能していません。
一方で犬はネコよりも大きな勾玉状の虫垂を有しています。
雑食性と言うことを示しています。
犬には犬の必要な栄養素がある
犬には犬に必要な栄養素があります。
健康維持のためには犬の必要栄養素をきちんと含んだドッグフードを与えてあげるのが好ましいでしょう。
犬の食事で必要な3大栄養素(タンパク質、脂肪、炭水化物)の割合は以下の通りです。
犬:タンパク質25、脂肪15、炭水化物60
ネコや人間はどうでしょう。
ネコ:タンパク質35、脂肪20、炭水化物45
人間:タンパク質18、脂肪14、炭水化物68
ネコは肉食なのでタンパク質の必要量が犬や人間よりも多くなっています。
一方で犬は雑食の人間と似たような比率になっています。

犬と炭水化物
犬は唾液中にアミラーゼが無いので炭水化物、特にデンプンの消化ができないと思ってる方が多いかもしれません。
しかし犬は膵臓から分泌されるアミラーゼで加熱したデンプン(小麦粉デンプン、とうもろこしデンプン)を消化できます。
炭水化物の中には犬の成長や健康維持に必要な栄養素が含まれているため、ドッグフードの材料として利用しているメーカーが多いのです。

間違った解説のサイトが多い
犬は本来肉食だから・・・など肉食動物だから新鮮な肉類を使ったフードが良いフードだと解説しているサイトが多いですよね。
ご覧になったことがあると思います。
また、フードの評価方法として
- 穀物の入ってない餌(グレインフリー)が良い
- 食いつきが良い
- 栄養バランスが良い
などと解説をしている、いかにも専門性が高いサイトだと思わせるところもあります。
グレインフリーが良いのか?
グレインフリーは穀物類にアレルギーがあるワンちゃんや、穀物類を食べると便がゆるくなったり調子を崩してしまいやすいワンちゃんなどに有効なフードであり、特にそれらの問題を抱えていない犬には必須ではありません。
穀物もきちんと消化し栄養分を吸収することができます。
穀物には犬に必要な良質な栄養が含まれている物がありますので、一概にグレインフリーが良いフードだとは言い切れないはずなのです。
穀物は犬にとって本来必要のない栄養素です。
このような見解は素人と言わざるを得ないでしょう。
食いつき
食いつきの良さなどは定量的にどう評価するのでしょうか笑
ドッグフードにおいて嗜好性は重要です。
嗜好性の高いフードとは、犬が自ら好んでモグモグと食べてくれるフードと言えるでしょう。
しかし嗜好性は個々の犬で異なってくるため、全ての犬での食いつきを評価することは不可能です。
栄養バランス
栄養バランスの評価に関しても専門的分析は行っておらず、タンパク質が豊富であることなど製品のHPなどからの内容の受け売りで、少し表現を変えたくらいな記載になってます。
栄養バランスの評価が十分なサイトは見当たりません。

食事が体を作る
私達人間と一緒に生活するようになった犬は自らの意思で健康維持することができません。
食事に関しても同様で自ら食するドッグフードを選ぶことができないのは言うまでもないでしょう。
しかし、犬は栄養素を得るために食事しなくてはなりません。
人間も健康に生活するためには食事が大事だと言われてます。
これは犬も同様ですね。
栄養素は身体の構成要素でありエネルギーを供給し、代謝などの身体機能に関わり生命維持のために必要不可欠です。
食事が身体を作っているのです。
まとめ
今回は犬は肉食動物ではなく雑食動物だということについて解説しました。
肉食と雑食の違いをキチンと認識してもらえたでしょうか。
雑食なので肉類中心のフードを与えなくてはならないというのは過剰な認識と言えます。
多くの高価なプレミアムフードはグレインフリーなどを謳い文句にして穀物類の排除をアピールしています。
ただ、それは全てのワンちゃんに必要なフードではないということです。
グレインフリーは穀物アレルギーなどを患っているワンちゃんに有効ですが、特にアレルギーなどの無いワンちゃんにはあまり意味がありません。
むしろ穀物類から得られる栄養素を積極的に摂取したほうがワンちゃんの健康維持に有益な場合もあります。


犬は肉食に近い雑食動物と言う認識を持ってフード選びをするのが良いと思います。